近年、全国のいたるところで空き家の増加が顕著であり、社会問題にもなっていることをご存知でしょうか。
空き家を空き家としていつまでも放置しておくと、持ち主にとって問題が発生するだけではなく、その地域、そして町全体にも悪影響を及ぼしていくため、全国の各自治体がこの空き家問題の解決に力を尽くすほどなのです。
では空き家を放置していると、どんな問題点が出てくるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
空き家放置で起きる問題点
倒壊リスクが高い
空き家はもともと老朽化して廃屋化していることが多く、ただでさえ倒壊のリスクが高いものです。
さらに、日本の家屋はほとんどが木造であり、木造住宅は本来定期的な換気や手入れを行わなければ傷みがどんどん進んでいきます。湿気がたまって腐食したり、金属部分がさびたり、カビが発生したりというように、空き家は放置すればするほど老朽化が進んでいきます。旧耐震基準で建てられている家屋も多いため、倒壊リスクは上がる一方で、小さな台風や地震でも崩れてしまう恐れが大きくなるのです。
倒壊することで怖いのは、周辺の住宅や通行人に被害をもたらすことでしょう。
壁が崩れて隣家の外壁を破ったり、屋根の瓦が落ちてきて通行人をケガさせたり。一般的な建物であれば賠償保険に入っていて、その範囲で賠償が可能ですが、空き家の場合は適用外だったり保険金が支払われなかったり、という恐れもあるため、二重三重で注意が必要になります。
放火犯に狙われやすい
放火されやすい家の特徴として、
・ゴミなど燃えやすいものが放置されている。
・通行人の目に触れづらい、ひとけがないところにある
・燃えやすい構造である。
というものがありますが、空き家というのはこの特徴をほぼ満たしてしまっています。放火犯の格好の的になりやすいのですね。
また、人が住んでいる・ひとけが多い場所であれば、火事が起きてもすぐに消し止められて被害が最小限で済むこともあるでしょうが、空き家であるがために発見が遅れて大きな火災になってしまうという、嫌な相乗効果も考えられます。管理されていないということは、それだけ危険をはらんでいるのです。
不法投棄されやすく、ごみの溜まり場になる
誰も住んでおらず管理もされていない空き家は、ひとけもなく雑草が伸び放題で人目にもつきづらいため、不法投棄場所としても狙い目にされてしまう恐れが大きくなります。
一度廃棄物が投棄されると、次から次へと便乗犯が現れて、庭いっぱいがごみの山になってしまった、という事例もあるほどです。
不法投棄の処理は、当然本来は投棄した本人が行わなければなりませんが、それが不明な場合は投棄された側が肩代わりしないといけないということにもなります。誰が捨てたのかもわからないごみの処分量を払わなければいけないなど、こんな馬鹿馬鹿しい事態はぜひとも避けたいところですね。
犯罪者や不審者の棲み処になる恐れがある
人目につきづらい空き家は、いつのまにか不審者が棲みついていたり、犯罪者の隠れ家になっていたりすることも考えられます。治安が悪化する原因になり、周辺住民にも大変迷惑です。
動物や害虫が棲みつく恐れがある
人間だけではありません。野生生物が巣を作ってしまって悪臭などのもとになったり、害虫が棲みついて周囲の住民に危険を及ぼしたり、ということも考えられます。
本当に、管理されていない空き家というのは知らないところで何が起きているかわからない怖さがあるのです。
雑草や木の枝が伸びて、景観が悪くなる・隣家に迷惑がかかる
手入れをしていない庭は、雑草や木の枝が伸び放題になり、見た目にも大変よろしくないだけではなく、ここも虫の巣窟になったり伸びた植物が建物を傷つける原因になったりもします。
資産価値がどんどん下がる
建物の価値は、時間の経過とともにどんどん下がっていきます。ましてや空き家となってしばらく時間が建っているようなものであれば、上述したように老朽化もさらに進んでいるはずです。
管理も手入れもせずに老朽化だけが進んでいく家屋をいざ売ろうと思っただけでは、ろくな値段はつかないでしょう。
どこかの段階で手を入れ、修繕を施し、資産価値をある程度でも復活させてから売りに出しておけば、もしかしたら現れたかもしれない買い手も、放置していたために逃してしまった…ということになりかねません。
本当に空き家は放置していても何も得にならないどころか、損にしかならないのです。
周辺の資産価値も下がってしまう
手入れが行き届いておらず、雑草が生い茂り得体のしれない生き物や害虫の巣窟になったような家屋が存在する区域に、新しく住みたいと思う人が果たしているでしょうか?
景観の悪さ・不衛生さばかりが目立ち、その空き家だけではなく周辺一帯の地域すべての資産価値が下がってしまう事態にもなりかねません。
自分だけではなく、周囲にも多大な迷惑をかけてしまうのです。
空き家対策特別措置法とは?
空き家の放置は、あまりにも悪質とみなされた場合、行政に強制的に取り壊されることもあります。
これは、空き家増加の社会的問題化を受けて2015年5月に制定された「空き家対策特別措置法」により、行政代執行というものが可能になったからです。
まず、空き家対策特別措置法では、以下のような空き家が「特定空き家」というものに認定されるようになりました。
・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家等をいう。(2条2項)
この特定空き家とみなされてしまうと、自治体が家屋に対しての立ち入り調査や指導、勧告、撤去命令といったものができるようになったのです。
もちろん、途中の段階できちんと自治体の指導を受け入れて改善すれば、特定空き家の認定が取消しになります。しかし度重なる指導を無視し続けていると、最終的には50万円以下の過料が科せられたうえ、行政代執行で強制撤去という末路をたどることになります。
強制的に解体してくれるのだったら、その方がいいのでは…ということではもちろんありません。解体工事代は当然空き家の持ち主に請求が来ることになるのですから。
取り壊しが本意ではなかったうえに、その工事費まで請求されるとなると、良いことは何もありません。しかも、特定空き家になってしまうと、固定資産税の軽減措置の対象からも除外されてしまいます。
自治体の指導には早い段階できちんと従わなければいけませんね。
まとめ
空き家を空き家のまま放置しておくと、問題ばかりが発生し、良いことは何一つないということがわかりましたね。それも、持ち主個人だけの問題ではなく、周辺の住民や町全体にも迷惑をかけたり、悪い影響を及ぼしたりすることにもなりかねません。
空き家問題はすでに全国各地で深刻化していて、首都圏でも例外ではないほどです。国や各自治体もこれを大きく受け止めており、上述しているような「空き家対策特別措置法」といった法令が施行されたり、補助金を用意する自治体が増えたりしています。
今や誰もが他人事ではなくなった空き家問題です。ひとりひとりが問題の本質を理解し、解決に向けて考えていきたいですね。